Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
そしてわたしは浮いてしまった
あまりに仕事が忙しくて、俗にいう五月病もわたしには無縁だった。
会社の先輩の持論は
「子供は、誰が何と言おうと子供が嫌がろうと毎日飽きるほど抱きしめるのがいいんだって。もちろん愛情をもってね。幼い頃にこれでもかってくらいスキンシップした子は不良になる率や犯罪者になる確率が極端に少ないんだって。親離れも子離れも早いうちにしっかりできるそうよ。これは両親がきちっといるいないは関係ないんだって。祖父母に育てられようが、片親だろうが、養子縁組の親だろうが、ようは幼い頃の愛情がその子の心の豊かさを決めるウエイトを占めているわけね。そういう人たちの独立心が強いのもそんな理由からよ」
だそうだ。
「あなたもきっとそういう育てられ方をしたのね。だから寂しがらないし、落ち込まないし」
と付け加えた。
きっと彼女は、社内で他の人が母親が死んだというのにクールだとか、この世で独りぼっちなんて私には耐えられない、よく平気ねとかいう噂を耳にしてわたしを慰めたつもりなのだろう。
―ちょっと違うような気もしたが― わたしは
「ありがとう、心配してくれて」
とだけ言った。
―スキンシップされたという点は当たっていたことだし―