Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
わたしはつとめて残業や土日出勤を買って出た。
だって今のところ他にすることがない。
家には寝に帰るだけの日々が続いた。毎日くたくただったのでよく眠れた。
わたしはもっと貯蓄しなくちゃ、頼れる人は一人もいないのだからと、なかば自棄で仕事をする日が続いた。
カウンターのカスタマー席に座る、ハネムーン旅行を申し込みに来たベタベタしたカップルや、うんざりするOLの会話、中年のケチで注文の多いわがままな客に辟易し、営業スマイルがぎこちなくなっていくのが自分でも分かった。