Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
時計は十時を少しまわっていた。
しんと静まっていたビルを一歩出ると、そこはもう都会の喧騒が渦を巻いて吠えていた。
人も車の数も日中と殆ど変わりない。むしろ、ライトアップされた分だけ賑やかだ。
そして殆どの人はだらしなく酔っ払っていた。
「他に楽しみはないのか」
と呟いたわたしも似たようなものだった。
千鳥足をかわしながら、わたしは新宿駅へ急いだ。もちろんまっすぐ帰るためだ。