Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
男はでかかったが、とてもあどけない顔をしていた。若かったのだ。
「僕のパパはバンビのパパと同じ人だよ。けれども去年癌で亡くなった。バンビをとても心配していた。パパが死んだこと、僕のママは君のママに言えなかった。なぜなら君のママはパパのこと凄く心の支えにしていたから」
「すいませーん、話が見えないんだけど」
わたしは男の腕の中でもがきながら言った。
この子は、少しおかしい子かもしれない、とわたしは思った。第一話し方がとても変だ。
「アパートへ行こ。そこで話すよ。夜は遅いし、駅の人とは『バンビに会えるまで居ていい』っていう約束だったから」
男は、駅員室からこちらを伺っている駅員に向かって親指を立てた。
「姉さん帰ってきたのか?よかったな」
駅員は男に愛想良く言った。