Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
男は段ボール箱から出て、嬉しそうにニコニコ笑った。
「なんだかこれから拾われていく子犬みたいだ僕」
「どこが子犬よっ!ライオンみたいなズー体して」
「パパは僕をグリズリーのようだと言った。知ってる?灰色熊のことだよ」
「・・・熊でもライオンでもいいけど、わたし疲れてるの。どうやってわたしの母やわたしの名前を調べたか知らないけど、世田谷の家はとっくに寄付してしまったし、母は生命保険になんて入っていなかったわよ。おあいにくさま」
わたしは無視して歩き始めた。
「待って、ねえさん!」
「はいっ?今何て言いました?」
「さっき言ったでしょ、僕らのパパは一緒。僕は君の弟で富安太って言うの」
「ふぁんたぁ、それは飲み物の名前じゃないの。あなたのパパも頭がおかしいの?」
「違うよ。パパは一生懸命考えたんだ。ピーターパンの飛偉太とどっちがいいか、ね。結局ファンタジアの方から取ったんだって」