Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
「おいしー、これ何てワイン?」
「ルートシルト、パパが好きだったワインなの。今日は電車でシブヤのデパートまで買い物に行ったんだ」
「へー、知らないけど。結構舌こえてたんだねあなたのパパ。ほんとこれ美味しいよ」
「僕らのパパだよ、姉さん」
わたしはどんどん、ふぁんたのペースに巻き込まれていくのがわかった。
けれども、ちっとも不愉快じゃなかった。
―不思議だ―
わたしはやんわりと酔っ払っていった。
夕食は、味も雰囲気も最高だった。
ふぁんたはアメリカでのいろんな楽しい話を次々にしてくれた。
わたしは我慢しきれずに何度も吹き出した。