Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―





「だれか助けて、イングリッシュよ!」



カウンターで接客をしていた小林さんが、お客様に「ジャストモーメントプリーズ」だけして逃げてきた。



新宿支店は場所柄外国人のお客様が多く、当然流暢にしゃべれるスタッフを抱えているのだが、今日に限って出張だの添乗だの病欠だので異国語班はすっからかんだった。



「こうなったら仕方がありません」



スージーが立ち上がった。



「め、めいあい、へるぷゆー?」


スージーの勇気ある第一声が響いた。


何とそのあとは、外国映画のようにスラスラとした英会話が流れてきて、


「サンキュ、サンキュ、ヴェリマッチ」


というものすごく感謝に満ちた言葉と共に去っていく、ブロンドの老夫婦の後ろ姿が見えた。





「スージーすごいっ、見直しちゃった!」



小林さんがはしゃいでカウンターに出て、すぐさまUターンしてきた。



「あのコがいる」


小林さんは目をぱちくりさせて言った。



「え?誰、誰!」


樋口さんが聞いた。



「横断歩道を行ったり来たりしてたコ」


小林さんが答えた。







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