Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
「荷物?ああお弁当だね。今日姉さん忘れていったからそれで届けにきたの。どうせ届けるならって、皆さんの分も作ってきたんだよ。姉さんは会社のみんなは外食してるって言ってたから・・・」
「ねえさん・・・て?」
はてなの顔で樋口さんが言った。
いつの間にかわたしを抜けた全員が、パーテーションの向こう側に移動していた。
「僕の姉さん、水沢バンビ!あっ姉さんだ、ねえさーん」
ずう体のでかいふぁんたは、みんなの背よりもらくらく頭ひとつ半は大きく、パーテーション越しに忍び足するわたしを容易に見つけて叫んだ。それも両手を揚げて。
馬鹿でかい声に引っ張られて、みんなもこちらを振り向いた。
羨望と驚きと意外そうな視線に、わたしは「へへへ」と照れ笑いをした。