Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
「ヨネちゃーん、こんな可愛いい子入ってたの?なぁーんで今まで連れてこなかったのよぉ、い・け・ず・ぅ」
そこは新宿二丁目。会社の近くでスージーの行きつけのバーだった。もう10年も通っていると言っていた。
「この子は社員じゃありませんよ。この新入社員さんの、お・と・う・と」
スージーはおしぼりを受け取りながら、そう言ってわたしを指差した。
「あらーっ美形なご姉弟だこと。羨ましいわっ、お肌なんてつるっつるね!おいくつ?」
「ふぁんたと言います。18歳です。どうぞ、よろしく。こちらは姉さんのばんび」
―あっちゃー、余計なことを―
わたしは顔がひきつるのがわかった。
「あんらー、姉弟で可愛い名前ねぇ。あたしの本名なんて権田剛造よ。ごんだごうぞうなんて、まさにおかまにピッタリよね。意外性があって」
「なに訳の分からないことを言ってるんですか。それよりママ、カラオケカラオケ!」
スージーは上機嫌だった。