Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―





「水沢さんの名前って、バンビって読むの?ずっと〔まみ〕かと思ってた。ふぁんた君が今日会社でもそう言ったとき聞き間違いかなぁーって」


樋口さんが言った。



―当然だ、初日の挨拶のとき確かにわたしはあやふやに濁らせた言い方で〔まみ〕と言ったんだもの。おまけにその後はガッチリ身辺ガードして同僚のみんなを寄せ付けようとしなかったし―



わたしは珍しく反省していた。



みんなはわたしが心を開くのを辛抱強く待っていてくれたのだ。



「そう、バンビ。聞き間違いじゃないです」


わたしは本当に素直に答えていた。



「素敵っ!愛情たっぷり考えに考え抜かれたって感じね。羨ましい」


樋口さんは目をうるうるさせてそう言い、みんなも声高に同調した。




わたしは照れ隠しのため一気に飲み物を仰いだ。
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