Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―






ふいにふぁんたが歌いだした。



〔アズ・タイム・ゴーズ・バイ〕のひっそりとしたセリフのような出だしに、彼のピアノが静かに追いついて行った。



ふぁんたの声は、その曲を歌うにはちょっぴり幼すぎたけれど、それでもみんなを興奮させるには充分だった。



拍手を浴びて照れながら席に帰ってくるふぁんたは、アイドルのようにもみくちゃにされて満足そうだった。



「姉さん、あの歌は僕らのパパが好きだった曲だよ。僕ずっと姉さんに聞かせたかったんだ。ありがとう権田ママ」


ふぁんたはわたしと権田ママを交互に見つめてそう言った。



「お礼を言うのはこっちよふぁんた君。あたしすっごく感激しちゃった」



ママの言葉にみんながうんうんと頷いた。
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