Monochrome Hands[BL]
1.good bye?

この街で生きる理由

死ぬ覚悟はもうこの仕事をしようと決めたその瞬間から出来ていた。

廃れていようとも、治安が悪くて誰も近寄らなくなろうとも、

オレはこの街が好きだ。だからこの街で死ねるなら本望。



オレが生まれ育ったこの“ハルカミ”と言う街は、

この辺りじゃ一番栄えている街……だった。

数十年前に新たな街が出来、そこが栄えるようになるまでは。

その街の名前は“カナシモ”。当時のハルカミを統率する者に反発した人間が作った街。

オレはまだ生まれる前だったから、その長がどんな人間だったか実際に見た訳ではないが、

傲慢な性格で逆らえば死ぬか奴隷のように死ぬまで働かされるかのどちらかしかなかったようだ。


だからなのだろう。街が出来た途端に多くの住人がカナシモに移住し、残った人間は三種類。

そんな長でも街を愛した人間。長に心酔する人間。

長のおかげで生きていけている、いわゆる悪党集団だ。

オレの家族は街を愛した故に、カナシモには行かなかった。だが今オレは一人だ。
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