40センチ
「授業ん時も今も、声に出過ぎでしょ。…なんだよ、天使って」
ブハッとまた笑う広沼に一発殴ってやろうと手を出した時、
パシッとその手は簡単に掴まれてしまった。
「俺を殴るなんて100年はぇーよ。ほら、箱取ってやるから待ってろ」
広沼は私の頭を乱暴に撫でると、ニッと笑いイスをどけて箱を楽々取ってしまった。
…………な…なに…今の。
心臓がドキドキ鳴って息が苦しい。
ん、と広沼は箱を私に差し出す。
「あ…ありがと…」
「いーえ、どういたしまして」
なんで…、なんでだろう。
さっきまでは平気だったのに…。
今は緊張で、のどがカラカラだ。
「ん?顔赤いけど…どうかした?」
「なっなんでもない!!」
「もしかして、俺に惚れちゃった?」
広沼は意地悪そうに笑った。
「…っ!そんなわけないじゃん!!」
違う、違う!!!
さっきは一瞬ときめいただけで、絶対好きなんかじゃないんだから!
そう自分に言い聞かせて、箱を片手に職員室に向かった。
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