家族の事情
「今頃あいつらは、必要でもない音楽の授業を受けているんだろうな」

謙一はほくそ笑んだ。



本来であればこの時間、謙一も同じ音楽の授業を受けていなければならない。

しかし、明日から期末テストが始まるというのに、受験に必要のない授業を受けるやつはバカだと謙一は思っていた。

この１日を有効に使った者が、明日からのテストを制するのだ。



今朝、母には

「腹が痛い」

と一言だけ言った。

母はオロオロしながら

「薬を飲んだ方がいい？」

と聞いてきたが、無視して自分の部屋に上がった。

階段を上がるとき、父とすれ違ったが父は謙一をチラっと見ただけで何も言わなかった。



母はきっと学校に病欠すると電話をしただろう。

父はきっといつものように会社に向かっただろう。
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