家族の事情
謙一は白いブラウスの女から目が離せなくなった。

彼女は自分が駅にいることすらわかっていないように見えた。

何十人という人が周りに立っているのに、彼女の目には誰一人映ってはいなかった。



何かを必死に求めているのに、それが何なのか彼女自身わからない。


「喪失感」



そう、きっと彼女は「喪失感」の中にいるのだと謙一は思った。


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