家族の事情
入学式で謙一は、これから始まる自らの輝かしい高校生活に胸をときめかせていた。

しかし3日後、謙一はこれまで見たことのない数字を目にする。



「36人中36位」



息ができなかった。

全身の毛穴が開き、目の下の血管がヒクヒクと動くのがわかった。

担任の谷村の声が、水中で聞いているようにくぐもって聞こえる。

教室の喧騒の中で、自分だけが色を失ったように感じた。



あれから1年以上が経過した。

部活には入らなかった。

放課後、校庭で汗を流すクラスメイトを、
「アイツらは、先がないな」
と心の中で笑った。

せいぜい短い青春を謳歌していればいい。

俺は無駄なことに時間を使わない。
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