家族の事情
やれることは全てやってきたはずだった。

しかし謙一の成績は相変わらず芳しくなかった。

かなりの手応えを感じたテストでようやく20番台後半に食い込めたくらいだ。



謙一は気づき始めていた。

例えば、授業中教師が自分のほうを見なくなったこと。

例えば、学級委員を決める選挙で自分の名前が挙がらないこと。

例えば、クラス行事が自分ではない他の人物によって仕切られること。

そして、クラスメイトに自分が必要とされていないこと。



変わらないのは、相変わらず自分を「完璧なお兄ちゃん」と信じている、低俗な自分の家族だけだ。
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