家族の事情
コップから伝わる水滴でできた染みは、問題集の端から3センチほどの大きさになった。

謙一は染みに気づき、

「チッ」

と小さく舌打ちをして、コップの中身を飲み干した。

ぬるくなった麦茶がゆっくりと謙一の喉を通過する。

時計を見ると、勉強を始めてからすでに1時間半が経過していた。

勉強を始めた時間というのは、問題集を開いた時間だ。

「今日は気分が乗らない。
 こんな日もあるさ。」

謙一はいつものように自分自身を慰めた。

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