あまい檻−キミ、飼育中。−
昨日まで見ていた世界が、がらりと変わって見えるようになる。
退屈な数学の授業も、
歩美と過ごす昼休みも。
時間は当たり前に流れて、いつもと同じ日常なのに。
たとえば、
今まで私が見ていた世界が灰色だとしたら、今は全てが色を持ってカラフルな世界に映る。
私は、自分でも呆れてしまう程、単純な生きものだった。
授業中に教室の窓から、空を泳ぐ雲を見つめて微笑んでしまう。
そんな小さな小さな“当たり前”さえ、愛しく輝きだしたんだ。