あまい檻−キミ、飼育中。−















私は電話を切ると、再び深呼吸をした。








……さぁて、部屋の掃除をしなくちゃ!




よいしょっと立ち上がって、私は前を向いた。



片付けは苦手だけど、仕方がない。






ベランダに散らかったゴミを分別して、洗濯をして。



お日さまの下でちゃんと干そう。


太陽の匂いがいっぱい染み込むように。










ベッドのシーツも洗濯しようとして、
枕の下から小さな紙切れを見つけた。




“眠れない夜は、愛犬の数を数えよう!
ジンが1匹、ジンが2匹………”









……なんだ、これ?






書いてある文字の下にはヘタクソな絵。


犬、の絵か?





私は笑った。
いつのまに、ジンはこんなイタズラをしたんだろう。











けれど、紙切れはそれだけじゃなかった。






全身鏡に貼りつけられた、

“ツバサちゃん、今日も可愛い!ナンパ注意!!”





ハブラシが入ったコップの下に、

“虫歯にならないように、丁寧にね!”





クローゼットに、

“ちゃんとハンガーにかけること!”










掃除をしながら、
いくつも、いくつも、それは出てきた。


小さな紙に書かれたメッセージ、ヘタクソな絵―……。












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