あまい檻−キミ、飼育中。−






放課後、
カラオケに行こうという歩美の誘いを断って、私はスーパーマーケットにいた。


ショッピングカートを押しながら、今日の夕食は何にしようかと考える。


自分一人ならコンビニでテキトーに済ませられるけど、ペットがいるからそうもいかない。





面倒くさい、と思いつつも、何となく楽しんでいる私がいるのはなぜだろう。



夕方のスーパーマーケットは混雑していて活気に溢れている。







……ジンに聞いておけばよかった。

スキな食べ物とか、キライな食べ物とか。




そうすれば、こんなに悩まなくてすんだのに…。









ふと、野菜売り場で足を止める。



鮮やかな赤と黄色のパプリカが目についた。


ツヤツヤしていて、新鮮そうだ。




私は、赤いパプリカを手に取ってみる。






……牛肉と一緒に炒めようか。


甘辛い味付けにして……うん、色合いも綺麗だし、絶対美味しい!





それにホカホカのご飯とお味噌汁、サラダも作って……。




頭の中で、食事を前にしてスマイル満開のジンを想像する。


私は、思わず頬が緩んでしまう。






一人では料理をする気にもならないけど、一緒に食べてくれる人がいると頑張って作りたくなる。




私は足取りも軽く、買い物を続けた。









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