あまい檻−キミ、飼育中。−
「あ〜分かった!!」
桜助はニヤリと笑みを浮かべて、私を見つめる。
「俺と別れてさ、寂しくて犬飼ったんだろ?」
「はっ?」
モテる男の自惚れ……自信?
明るい桜助の調子のイイ言葉なんて、いつもの事だった。
私だって慣れていた。
バカじゃないの?、なんて笑い飛ばしていたくらいだ。
けれど、どういう訳か、今は酷く耳障りに感じる。
「……翼、やり直さない?」
桜助が笑顔でサラリと言った言葉に、歩美は眉をひそめる。
……そう。桜助は、こーゆーヤツなのだ。
よく言えば、真っすぐ・純粋。
悪く言えば、KY・無神経。
それでも、底抜けに明るくて大らかな………THE正統派イケメンの桜助は、男女問わず周囲から好かれている。
「俺、やっぱ翼がいい。」
「……イヤ。」
「…なんで?」
「面倒くさいから。私は…ジンがいれば、それでいい。」
私はそう告げると、歩美に一言「帰るね。」と言って、桜助に背を向けた。