あまい檻−キミ、飼育中。−
あれから、ジンはベランダに出て鼻歌を口ずさんでいる。
ご機嫌なのか、怒っているのか、私にはもうさっぱり分からない。
キッチンに立つ私は、お弁当を作っていた。
梅干し、青じその葉、ちりめんじゃこを使ったおにぎり。
ジンがスキなハンバーグは、ふっくらジューシーな仕上がりに。
ポテトサラダには、フライパンで焦げ目がつく程度に炒めたソーセージと、薄くスライスした玉ねぎ。
マヨネーズ、そして粒マスタードを混ぜ合わせる。
最後に塩で味を調えたら出来上がりだ。
お弁当を包みながら、私はチラリとジンを見た。
ジリジリと焦がすように心が鳴く。
普通にしていたいのに、何となく気まずくて……。
意識してしまうのは、さっき耳を噛まれたせいだ。
普通に!普通に!!
ご主人サマとペットなんだから!!
「ジン、散歩に行こう。」
そう言った自分の声は、意志とは無関係に擦れてしまった。