時雨の奏でるレクイエム
「まあまあ、落ち着くことじゃな。旅の方」

突然の乱入者にラディウスはぞっとした。
――気配がまったく掴めなかった……!?
クルーエルはいち早く声の主を捜し当てる。

「……誰?」

クルーエルは人影に向かって首を傾げる。
それは、褐色のくたびれたローブを着た人だった。
フードが目深に被られているため、性別はわからない。
それでも、その柔らかなソプラノの声が人影は女性だと教える。


帝国兵は、その人影が現れたと同時に皆一斉に姿勢を正し、人影に目礼する。
ラディウスはその様子をいぶかしみながら、人影と、いつの間にか人影の目の前に移動したクルーエルを見つめる。

「……実体がない。思念だけを飛ばしてきたんだね」

「おや、ずいぶん早く見破られてしまったようじゃな」

「名前は?」

「まず、先にそちらから名乗るべきであろう?それが礼儀というものじゃ」

「クルーエル」

「妾はアルミナじゃ」

「ね、もしかして、アルミナが私たちを招いたんじゃないの?」

その時、帝国兵が色めきだし、クルーエルに食って掛かった。

「アルミナ様を呼び捨てにするなど!!」

「言うこと欠いて、アルミナ様が貴様等を招いただと!?」

「不敬だ!」

「よい。だまれ」

しかし、アルミナは冷たく言い捨てる。

「お前たちはさがれ。私はクルーエル達と話しがあるのじゃ」

クルーエル達、と言った。
ということは、俺も一緒か。と、ラディウスは思う。
この、やたら偉そうな女性は、ラディウス達にどんな話しがあるのだろう?
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