時雨の奏でるレクイエム
帝国兵が全てリオー砦の中に入り、門の前にはラディウスとクルーエルとアルミナの三人だけになった。

「それで?俺達に用があると言ったな?」

「ああ。それにしても、よくわかったものじゃな、クルーエル。妾が門を開ける許可を出したと」

「なんとなくだよ。そんな気がしただけ」

「それで、そろそろ貴方の名前を教えてほしいのじゃが?」

アルミナはくるりと軽やかに身体をラディウスの方へ向けた。
ラディウスはしばし逡巡してから応える。

「……ラディウスだ」

「……まあ、それなりにある名前じゃな」

「用件は」

無駄話しをしようとしたアルミナを無視し、ラディウスはあくまで冷たく問う。
アルミナはやれやれといった風にため息をついた。

「お二方は帝都へ向かうのじゃろう?なら、途中で砂漠の村コウサへ行って欲しいのじゃ」

「なんで?」

クルーエルは首を傾げる。
コウサに寄ると、帝都へ行くには遠回りになってしまう。

「モンスターじゃよ」

「退治しろ、と?ただの旅人に?」

「ただの旅人なわけないじゃろう?エリンで紫色の狼を一瞬で片付けてしまった方達が」

さらりととんでもないことをアルミナが言った。

「なぜ、知ってる」

ラディウスの問いにはクルーエルが応えた。

「アルミナは、今、思念体だよ?あんまり離れていなければ一瞬でエリンに行くことも、リオーに行くこともできる」

「まあ、大体あたり、じゃな。それとも前提条件から、大はずれ、とも言えるの」

からからとアルミナは笑う。

「それは、もういい。問題は、なぜ俺達なのかだ」


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