時雨の奏でるレクイエム
アルミナは、笑った。
と言っても、口元しかわからないから、その瞳まで笑っているかはわからない。
すくなくとも、先ほどのような笑みとは異質のどこか寒気のする笑みだった。

「ちょっと、厄介なモンスターなのじゃよ。闇の幻獣王の眷属であるモンスターでの」

クルーエルが眼に見えて緊張する。
ラディウスは、エリンでのクルーエルの独り言を思い出した。

『嫌だな……もう、闇の幻獣王の力が光の幻獣王の力を超えかかっている』

闇の幻獣王と、光の幻獣王。
幻獣王は一体だけではないのだろうか。
しかし、ラディウスの思考はアルミナの言葉で打ち砕かれる。

「報酬は、幻獣王についての情報の提供と、帝都の宮殿の招待状が良いじゃろ」

「……なんだって?」

「くすくす。今のお二方は、この二つが欲しいのであろう?それでは、帝都で待っているからの……」

アルミナは口元に笑みを浮かべたまま、透明になって、消えた。


< 27 / 129 >

この作品をシェア

pagetop