時雨の奏でるレクイエム
二人の幻獣憑き
「私は、孤児だったの。お兄ちゃん、光の幻獣王の息子、ノインに拾われて、育てられた。お兄ちゃんは、召喚されて来たんじゃなくて、誰かを探すためにこの世界に来たんだって。だけど、私の身代わりに殺されたお兄ちゃんは、私に宿った。人として、この世界に留まれなくなったから」

クルーエルはふっと息を吐くと笑った。

「私もラディウスと、同じ。幻獣憑きだよ。人でも、幻獣でもない存在。人であり、幻獣でもある存在」

クルーエルは起き上がって、まだ混乱しているラディウスに抱きついた。

「探してた。ずっと……ラディウスのこと。やっと見つけた」

クルーエルはラディウスの暖かさを感じて、嬉しくなった。
でも、少し悲しくもあった。
この気持ちは自分のではなく、兄のものであるかもしれないから。

リリスと、ノインは互いに想い合っていたから。
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