時雨の奏でるレクイエム
クルーエルはラディウスの後ろを襲う触手を弾いていた。
檻に閉じ込められている女性はここからは遠くて見えないが、持続シールドを張った。
とりあえず、モンスターに奪い返される心配はないだろう。
本当は、ノインの力を使いたい。
だけど、ノインの力(というより幻獣の力だが)、返還の術は使えない。
まだ、クルーエルとノインの魂は融合していないからだ。
今の私は、ただの召喚術師でしかない……。

「キリがない……」

思わず、クルーエルは呟いた。
同じ時、ラディウスが同じことを呟いていたのをクルーエルは知らない。


そして、二人は油断していた。
疲弊していたのかもしれない。
一斉に、ラディウスに斬られた触手がクルーエルに襲い掛かった。
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