時雨の奏でるレクイエム
二人はコウサを去った。


モンスターに囚われた村娘は、焼き殺されてしまった。
モンスターの子供をその身に宿し、半乱狂になり、全員が殺してくれと泣きついたからだった。
シトロンの姉が特にひどかった。
包丁で、子供を殺そうとしたからだ。
シトロンは、姉が焼かれるのをずっと見ていた。炭になり、形が崩れてもなお、泣きながら、ずっと見ていた。


二人が去ったとき、見送ったのは、シトロンだけだった。
ずっと、深くお辞儀していた。
一言もしゃべらなかった。
それでいいと、ラディウスは思った。
この村は傷つき過ぎた。
傷を癒す時が必要だろうから。


ラディウスは、クルーエルにモンスターがどうなったのか聞いた。
クルーエルは、リリス様が連れて行ったと言った。
どこでもないどこかへ、モンスターを道連れにして、還っていったのだと。
ラディウスは一言そうか、と言っただけで、あとは何も言わなかった。
コウサではいろいろありすぎた。
変わりすぎてしまった。
考える時間が必要だと思った。



次に二人が目指すのは、帝都。
帝都サリヴァン


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