時雨の奏でるレクイエム
アルミナに案内されて向かった先は、半ば予想していたとはいえ、宮殿だった。
門番に咎められることもなく入ってしまった。

「うわぁー!!綺麗だね、ラディウス」

「ん……あぁ、装飾か」

確かに、宮殿の中は光を使った装飾でいっぱいだった。
吹き抜けの広間の真上には豪華絢爛なシャンデリア。
意匠をこらしたランタン。
床には蛍石をはじめとした数々のガラス光沢の貴石が埋まっている。

「王国の城はもっとすごいぞ。壁までガラスでできてるんだ」

「ラディウス、王国の城に入ったことがあるの?」

クルーエルの無邪気な質問にラディウスは言葉を詰まらせる。
公にされていないとはいえ、自分は王家を追放された身だ。
それに、場所も悪い。
この宮殿はいわば、王国の敵国の居城だ。
簡単にラディウスの過去を明かせる場所ではないのだ。
だが、そのとき、先を行くアルミナが振り返って笑った。
と言っても瞳が見えないので、口元だけだ。
ラディウスは不気味に感じた。
同時に、嫌な予感も憶える。

「そりゃ、あるじゃろ。なんと言っても王国の第二王子じゃからの」
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