時雨の奏でるレクイエム
「とはいえ、そのおかげで妾達一族は存在できるからの。何も言わず一族を守ってくれるザルクには頭が上がらないがの」

「アルミナは……」

クルーエルは言葉を濁した。
アルミナが幻魔の一族であることは、わかった。
幻獣界にいない、二人の幻獣の行方もわかった。
でも、アルミナの力はそれだけじゃないと思う。
空間と時間以外のなにか他の幻獣の力も持っている気がするのだ。

「それで、幻魔の一族は一体何人の幻獣の血を取り込んだんだ?」

ラディウスは毅然と言い放つ。
クルーエルは驚いてラディウスを見上げた。
アルミナも同様で、ラディウスから視線を外せないでいる。

「なぜ、そう思うのじゃ?」

「以前、帝国に来たとき、幻魔の一族を名乗る者に誘いを受けたことがある。彼は確かに、リリスの力を欲しがっていた」

ラディウスは止まらない。

「それに幻獣界から転生を間近にした幻獣がいなくなっていく。ここ、1200年のことだ。幻魔の一族は、幻獣を閉じ込めているんじゃないのか?」

クルーエルは、はっとしてアルミナを見た。
アルミナは意表を突かれたように唖然としていたが、すぐに元のように口元に笑みを浮かべる。

「その通り。ここ、水晶の間には、以前一族が取り込んだ幻獣が閉じ込められている」

そのとき、アルミナとは違う声が聞こえた。

「ザルク……」

ラディウスはそう呟いた。
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