時雨の奏でるレクイエム
アルミナはザルクの元へと歩み寄ると、その隣に立って、全てを見通すような眼でラディウスとクルーエルを見つめた。
ザルクの瞳は白く、どこを見ているのか、まったく見当がつかない。

「リリス。そして、幻獣王の娘よ。協力してくれないだろうか」

ラディウスは迷子になった子供のように戸惑いながら、ザイツとアルミナを交互に見つめる。
クルーエルはラディウスの服の裾を掴むと、そっと身を寄せた。
離れるもんか、と決意して。
アルミナはそっと視線を二人から離した。

「助けたいのじゃ」

「えっ……?」

「ここに閉じ込められた幻獣の嘆きと悲しみが、妾には自分のことのように感じるのじゃ」

「二人の力と、私の力で、ここの幻獣を開放したいと思う」

ザルクは毅然と言った。

「この一族は、もう終わりだ。幻獣の力を独占し、地位や金を求める連中で溢れてしまっている。既に、守る価値もなくなった」

「幻獣さえいなければ、この一族は自然消滅していくじゃろう。力を失って……」

「助けよ、ラディウス」

ラディウスはためらいながら頷いた。
ラディウスの視線は、アルミナに固定されていて、ラディウスが今なにを想っているのか、クルーエルには痛いほどよくわかってしまった。
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