時雨の奏でるレクイエム
部屋に戻ってからオリビンを呼ぶと、オリビンはクルーエルを値踏みするように見つめ、それから数人のメイドを呼んだ。

「クルーエル様暴れないでくださいね」

そんな獣みたいに言わなくても。
そう思ったところでクルーエルは何人かのメイドに取り押さえられ、湯船に放り込まれた。

「ぷ」

そして抗う暇もなく髪も体も洗われる。
そして気がついたら、髪も結われ、服も着せられていた。

「あっれぇ……」

クルーエルは自分の体のあちこちを見てみる。
混乱している間に全てが終わっていたらしい。
メイドは皆一様に晴れ晴れとした顔をしている。

「やっぱり可愛い女の子を着飾らせるのは楽しいわぁ……」

今素材と書いて女の子と言われたような気がしたのだが、気のせいか?

「うーん……でもなにか物足りない気がしますわ」

オリビンは顎に手を当て、考え込む仕草をする。
クルーエルは部屋に来たとき外した髪飾りを手に取った。

「あの……」

「どうかいたしましたか?」

「これをつけて欲しいんです」

それはうさぎの皮で作られた髪飾りだった。
ラディウスが作ったものに綿と瑠璃の玉をつけた、白と蒼の髪飾り。

「まあ」

オリビンは目を丸くする。
クルーエルは駄目だったかな……と思って落ち込んだ。
たしかに、こんなところでは安っぽすぎるかもしれないが、大事なものなのだ。

「それならこちらにしましょうか。クルーエル様にはそちらの方が似合う気がするわ」

「ほんとっ?」

ぱあっとクルーエルは顔を輝かせてオリビンを見上げた。
オリビンはにこにこと笑みを浮かべてその髪飾りを受け取った。
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