時雨の奏でるレクイエム
記憶の幻獣
「王って、その……双子の兄の?」
「ああ」
「そうなんだ……」
「到着しました。中に入って指定の席へお座りください」
オリビンは扉の前に立ち、ノックをするとぎぃ、と音を立てて扉が開いた。
中には、既に人が集まっていた。
そして、国王ではあるディランを除いて、そのほとんどの人達が赤目だった。
席は二つ空いている。
ディランに近い席と、遠い席。
遠い席には、目の色が赤ではない人達が集まっている。
クルーエルはそこに、そしてラディウスはディランに近い席に案内された。
「さて。全ての客人が集まったな」
ディランが杯を掲げる。
それを合図にして食事が始まった。
クルーエルは居心地の悪さを感じていた。
料理は、テーブルに乗せられた料理を勝手に取って食べるもので、半分以上の人はマナーなんか歯牙にもかけず、自由に食べている。
平民の多い席の、ディランなりの配慮なのだろう。
だが、誰もなにも喋らない。
咀嚼音だけが聞こえる広い部屋に、ラディウスと自分にかかる無音の視線。
ラディウスはそれを気にした風もなく、堂々と食事を取っていたが、自分はこんな注目に慣れていない。
「ラディウス」
あらかた食事が終わったところで、ディランがラディウスに話しかけた。
「なんでしょう、殿下」
ラディウスは言葉使いこそ丁寧だが、態度は不遜で、その瞳にディランは映されていない。
クルーエルははらはらと緊張しながらやり取りを見つめる。
それは他の人達も同じで、せっかく人の声が聞こえるようになったのに、さらに空気が重くなっていた。
「ああ」
「そうなんだ……」
「到着しました。中に入って指定の席へお座りください」
オリビンは扉の前に立ち、ノックをするとぎぃ、と音を立てて扉が開いた。
中には、既に人が集まっていた。
そして、国王ではあるディランを除いて、そのほとんどの人達が赤目だった。
席は二つ空いている。
ディランに近い席と、遠い席。
遠い席には、目の色が赤ではない人達が集まっている。
クルーエルはそこに、そしてラディウスはディランに近い席に案内された。
「さて。全ての客人が集まったな」
ディランが杯を掲げる。
それを合図にして食事が始まった。
クルーエルは居心地の悪さを感じていた。
料理は、テーブルに乗せられた料理を勝手に取って食べるもので、半分以上の人はマナーなんか歯牙にもかけず、自由に食べている。
平民の多い席の、ディランなりの配慮なのだろう。
だが、誰もなにも喋らない。
咀嚼音だけが聞こえる広い部屋に、ラディウスと自分にかかる無音の視線。
ラディウスはそれを気にした風もなく、堂々と食事を取っていたが、自分はこんな注目に慣れていない。
「ラディウス」
あらかた食事が終わったところで、ディランがラディウスに話しかけた。
「なんでしょう、殿下」
ラディウスは言葉使いこそ丁寧だが、態度は不遜で、その瞳にディランは映されていない。
クルーエルははらはらと緊張しながらやり取りを見つめる。
それは他の人達も同じで、せっかく人の声が聞こえるようになったのに、さらに空気が重くなっていた。