姫様と7人の王子様
「おやおや?何か嫌なことでも?」
「あたりまえ!朝から雌豚雌豚って言われて、いい気でいるほうがおかしいわ!あのナルシスト男・・・!」
彩鈴は憎くて仕方がなかった。腸が煮えくり返るとはこのことを言うのだろう。
「・・・あれれ?女性の声がすると思ったら・・・可愛い子発見♪」
誰かベッドで寝ていたのかしら?だとしたら大声を上げてすまないことをした、と彩鈴は思った。
「あ、あの、起こしてしまってごめんな・・・きゃあッ?!」
振り返って謝罪をしようとしたところ、何者かによって抱きしめられる。
厚い胸板、明らかに男性のものだ。彩鈴は慌ててもがくが、相手の力が強くまったく離れてくれない。
「俺、可愛い子好きー・・・」
髪の毛をワシャワシャされる。髪が乱れる。やめろ。
「・・・放しなさい!」
彩鈴は思い切り相手を跳ね飛ばした。男は一瞬慌てたが、すぐに体勢を立て直し、ベッドの上に腰掛けた。
「要ー?転校生ってこの子?何年何組?」
「要じゃなくて要先生ですよ?この子は二年J組です」
「うっそ!まじで!?なんだよ、午前の授業サボらずに出とけばよかった」
おそらくあの空席だろう、と考えた。
「華紅羅彩鈴です。よろしくお願いします」
「彩鈴か、可愛い名前だね」
(なんとなく、ミトスみたいな雰囲気持ってる人だな)
明らかに女たらし。先ほど彩鈴に声をかけてきたミトスにかなり似ている。耳には黒いピアスがギラギラ輝いており、パッと見・・・不良?
「まあ、俺の名前はもう知ってると思うが・・・」
「いや、白夜。彼女はテレビを見ない主義者でね。おそらくブラロズも知らないだろう」
「え、ブラロズ知らないの?!それは・・・時代遅れだな・・・」
白夜と呼ばれた男はまじまじと彩鈴の顔を見つめてくる。顔立ちは整っていて、耳のピアスがキラリと光った。
「俺の名前は嵐山白夜。俺を見ればみんな俺のト・リ・コ♥」
最後の三文字だけ、お色気ボイスで強調した。
「見るだけで惚れるのだったら、その女の子の思考回路が狂ってんじゃないの?」
彩鈴は自分に陶酔している白夜に言葉の釘を打ち付けた。
「わかってないなぁ彩鈴は。全国の、いや、全世界の人気を浴びる俺・・・すげえ・・・!」
(ダメだこの人。きっとナルシストね)
「要先生、あと十分ほどで予鈴が鳴るので戻りますね」
「え、俺のこと無視?」
「無視もなにも、・・・会話が成り立つ気がしないっていうか・・・」
彩鈴は苦笑いしながら答える。目線は合わせることなく、やや斜め下を見つめる感じで。
「でも、俺のことを十秒見つめてくれたら、きっと惚れるよ!やってみ!」
(なぜこの男はそんなキラキラな眼差しで見てくるのかしら。・・・まあ、やってみてもいいけど)
「じゃあいくわよー・・・・・・」
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「見つめられてる俺・・・かっこいい・・・・」
(・・・)
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「はい!もうこれで君は俺の子猫ちゃんさ!」
「・・・・・・って、なるわけないじゃない!!!!!!!!!」