キスからはじめよう





披露宴もクライマックス。あたしは何となく会場を後にしてロビーのソファーに腰かけた。




「………っ」


声を押し殺して泣いた。止まらない雫。本気で先輩のこと好きだったんだなって思い知らされた。



5分位泣き続けたあたしはふと我に変える。鏡を取り出すと真っ赤な目に化粧が崩れた最悪なあたしが映っていた。



「もうこんなんじゃ戻れない…」


咄嗟に未夢にメールを打ちソファーを立ち上がって歩き出そうとした瞬間腕を掴まれた。



あわてて振り返ると名前も知らない人。


涙で顔が滲んで見えない。


「…」


何で腕を掴まれたのかわからない。


ボーッとする頭。クラクラする。



『あんた…酷い熱』


いきなりおでこを触られた。


ナンナノコイツ。




何か言ってやりたいけど涙と熱でどうにもならない体。



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