ローレライ
―うわっ何それ!ねえ、名前なんていうの?
ゼン。
―そっ。あたしは美玲ってゆうんだ。ゼンは何でこんなとこにいんの?
夜の海が、すごく好きだから。
―あたしはプチ家出…ってまあ、どうでもいいよね。ねえ、もう一回聞かせて、今の曲。
『乾いた愛で何を紡ごう…』
気が付いたら泣いてた。大きな世界にたった二人しかいない空間で。今出会ったばかりのこの男の声に、静かに涙が溢れた。
彼の唇が、指が、夜の波に溶けていく。
「美玲、何で泣いてるの?」
「何でだろ…分かんない」