ローレライ
「ね、ゼンはこの辺に住んでるの?」
「違うけど…俺もちょっと逃げ出したんだ…周りも親も全部嫌になって。なんで俺を自由にさせてくれないのかって」
ゼンは、悲しい顔をしてた。多分、あたしは入り込んじゃ駄目なんだ。
「俺はギターを好きに弾きたい。好きに歌いたい」
「うん」
「…ねえ、さっきの曲に名前をつけてくれないかな」
「美玲!」
「却下ー」
「えー?!」
あたし達は一晩中騒ぎ合った。
もう二度とはこないかもしれない夜が、本当に楽しかった。
こうして、あたしの中3の夏は終わったんだ。