放課後姫とヤンチャな騎士

「私、一年椿組の平井楓（ひらいかえで）と言います。」


楓は小さな声で、囁くように言った。


「私は…」


「知っています。
『放課後姫』様ですよね…」


楓は俯いたまま言った。


「そうよ…
楓ちゃんの好きなように呼んで頂いて構わないから。」


乃里子が言うと、楓はコクリと頷いた。


乃里子の記憶によると、楓は平井カンパニーの一人娘だったはず。


白石の名に比べると見劣りするが、一般的には充分過ぎる程の財力と権力を持っているはずだ。


そんなお嬢様に深刻そうなご相談。


乃里子は楓の言葉を、今か今かと待ち侘びていた。