【短】生徒会の秘蜜〜非日常的な日常〜
★童話パロディ編★



静寂につつまれた廊下に、ふたり分の足音が響く。いつものように学校に登校したあたしは、最近やっと通り慣れてきた廊下を同じクラスの那智くんと歩いていた。この廊下よりは居心地よく感じる程に長く時間を共にした那智くんと、他愛無い話をしながら、ふと思う。まだまだ慣れていないにしても、学校全体の雰囲気がなんだかいつもと違う?


「あ、の……那智くん」

「ん?どーした?」

「なんだか、すごく静かじゃないですか?」


静かすぎるまわりの雰囲気に不安になって、那智くんを見上げる。

普段なら昇降口から教室までにすれ違う学生や先生が大勢いるのに、今日はまだ誰ひとりともすれ違っていなかった。


「…確かにそーだな」


不意に立ち止まりキョロキョロと辺りを見回した那智くんは、あまり驚いた様子も無く、ただ小さく呟いた。

そして、紫がかった髪をガシガシと乱暴に掻く。


「あ〜…今日って、なんかあったっけ?」


これは那智くんの困ったり焦った時のクセ。

眉をハの字にして誰にともなくそう呟く那智くんが可愛くて、あたしは思わず小さく笑みをこぼした。

先ほど不安を感じて話をふったのはあたしなのに、おかしな話かもしれないけど。


「…何笑ってんだよ」


案の定、少し不機嫌そうな那智くんの声が頭上から降ってくる。


「なんでもないですよ」


「ほんとかよ…」


「本当ですって。とりあえず、教室に行ってみましょう?ね、那智くん」


未だ不機嫌そうにしている那智くんを見上げながら、そう言えば那智くんは不満そうにしながらも再び教室に向かって歩きだす。

あたしも那智くんに続いて、未だ静かな廊下を教室に向かって歩き始めた。
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