【短】生徒会の秘蜜〜非日常的な日常〜
お互いの姿を視界に捕えた瞬間、ふたりともピシャリと動きを止める。
「…………」
「…………」
「…………ラ、ビ?」
「……ッ!」
暫しの沈黙。
先に沈黙を破ったのはソラさんで、ぼーっとソラさんの姿に魅入ってしまっていたあたしは反射的に視線を逸らした。
ソラさん…すごく、格好いい。
鏡越しで目が合っただけなのに、心臓がうるさく騒いでいる。
学校ではラフにシャツを着ているだけだが、今はソラさんの髪と同じ漆黒のスーツをきっちりと身にまとっている。
普段とは全然違う格好と雰囲気のソラさんは、ただただ格好よくて。
なかなか落ち着いてくれない心臓の音がこの静かすぎる空間ではそれが嫌に耳について、“ソラさんに聞こえてしまうかもしれない”なんて考えが頭をよぎった。
「ねぇ…ほんとに、ラビ?」
コツリ、コツリ…と、次第に大きくなる足音と共にソラさんにそう問われる。
俯いていてもソラさんが近付いてきているのは明白で、それに合わせて座っていた椅子から立ち上がろうと足に力を入れて……
「きゃッ…!」
自分が履き慣れないヒールを履いていることに、無駄に冷静な思考で気付いた。
「……ッ!」
倒れる、そんな言葉が頭をよぎりあたしはギュッと目をつぶり、身体に与えられるであろう衝撃に身構える。
「あ、れ…?」
しばらくしても身体に痛みは与えられず、代わりにぽすっ、という柔らかな音と露出した腕に感じる微かな布擦れの感覚。
「クス、やっぱりラビみたいだね。着飾っても、そういうところは変わってない」
腰にまわされた腕の感触に気付いて、瞑っていた目を恐る恐る開き顔を上げると、呆れているようなそんな表情をしたソラさんと視線が絡んだ。