【短】生徒会の秘蜜〜非日常的な日常〜


スタスタと足早に、まるで女の子たちを振り切ろうとするかのように、目的も無く歩を進めるソラさん。

さっきまで見えていた綺麗な横顔はもう見えなくて、代わりに見える意外と広い背中しか見えないことが今は淋しい。

ソラさんに引かれている手が、なぜか痛かった。


「ねぇ、あなた。ちょっと待ってくれないかしら」


突然叫ぶような女の子の声が聞こえたかと思うと、ソラさんの足が歩みを止める。

聞こえた女の子の声がソラさんに向けられたものだと気付き、渦巻く不安を取り除くためにその様子を覗くように見た瞬間。


「ねぇ…あなたが誰なのかなんて知らないけど、私あなたのこと気に入っちゃったの。だから、ね?」


空気が冷え固まるような、そんな感覚が身体を駆け巡った。

ソラさんの首にまわされた白く華奢な腕に、誘惑するような女の子特有の声。

甘えるように上目遣いでソラさんを捉えていた女の子の瞳が、フッとあたしを写す。


「こんな子、あなたには相応しくないわ」


無邪気に吐き出された言葉が、鋭く突き刺さるように心をえぐる。


分かっていた、はずだったのに。

いざ、言葉にされるとひどく…痛い。

釣り合うはずなんて無いって分かっていたって、痛い。


視界が霞んでいって…あぁ、自分はひどい顔をしているんだろうなぁ、と顔を俯かせる。

と同時に、緩んでいた手首の戒めから逃げるように、自身の手を引く。


「ねぇ、君さ…退いてくれない?邪魔なんだけど」


でも、あっさり解かれるかと思っていた戒めは更に強く腕を引いて、あたしの身体を包み込んだ。


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