【短】生徒会の秘蜜〜非日常的な日常〜


「何よッ!あたしは本当のことを言っただけじゃない!」


「…いい加減黙りなよ。僕にだって、我慢の限界がある」


夢のような状況に浸ってしまっていたが、肩に回されたソラさんの手に力が籠もり、肩口に微かな痛みが奔ったことで意識が覚醒する。

地を這うような低い声で告げられたその言葉から、あと少しでソラさんの怒りが沸点を越えるであろうことが理解できた。

ソラさんは、目立つ行動を慎むことがパーティー参加の条件。

此処まで騒ぎが大きくなってしまっては今更かもしれないが、これ以上人目につくようなことは避けなくてはならない。

折角のパーティーなのに、ソラさんがいないなんて意味が無いのだから。


「ッ、ソラさん!だめっ…!」


縋りつくようにソラさんの腰に腕をまわす。

彼を止めるためにと呼んだ声が思っていたよりも悲痛さを滲ませていて、余程自分がソラさんと過ごすパーティーを愉しみにしていたのだと今更ながらに理解した。


「随分と可愛らしい声を出すのねぇ。そうやって男をたぶらかしているのかしら?」


「…ッ!」


「あら、何も言い返してこないってことは、図星なの?厭らしいわねぇ」


この美少女は余程あたしが気に入らないらしい。

標的をあたしへ転換した美少女は、周りに聞こえるような声でチクチクと侮辱の言葉を並べる。

その声は、何か愉しい事をしている子供のようで、人を罵倒している時の声音ではない。


「……ラビ、離して」


煽るような言葉のせいで、とうとうソラさんの怒りが沸点を突破してしまったらしい。

あたしのために怒ってくれているのだろうか、なんて考えに悦んでいるヒマもなく、離してしまったらどうなるかなんて容易に予想出来るほど低い声が聞こえてくる。

その声に、あたしは弾かれたように慌ててフルフルと首を振った。


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