【短】生徒会の秘蜜〜非日常的な日常〜


ドクドクと激しく戦慄く心臓を落ち着かせるためにと、冷たい水を求めてふらふらと歩く。


「……あつい」


頬に自身の掌をあてがうと、わざわざ鏡で確認するまでもなく火照っているのが分かるほど熱っぽい。

冷たい飲み物を呑んだらバルコニーへ出てぼーっとする頭を冷やそうか、なんて思考を廻らせながら微かに食べ物の匂いがする場所へと歩を進める。


「うわぁ…すごい人の数」


たどり着いた場所で、あまりの人の多さに思わず驚嘆の声を洩らす。

これでは冷水を取りに行くのも相当大変だろうし、この人混みの渦中に飛び込むことを考えると…。

なんだか、冷水よりも外の空気をあびたほうがいい気がしてきてしまった。


「バルコニーに、出てみようかな…」


ぽつりと呟いた言葉は容易に喧騒へと呑み込まれ、それと同時にバルコニーへ向かうためにと踵を返す。


「ねぇ、キミもしかして…」


「えっ…?」


コツリと、ヒールの靴底がフロアの床に当たる小気味のいい音を響かせた瞬間。

誰かに呼び止められ肩を軽く叩かれたことで、再びその歩を止めることとなった。


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