【短】生徒会の秘蜜〜非日常的な日常〜
脳天に響き渡る、女子特有のキーの高い声。
香水と化粧品の芳香が入り混じった、鼻腔を突く不快な香り。
ごった返す人のせいでもやもやと熱っぽくなった空気が肌を撫で、不快感を誘う。
視界の端に映る、眩さを感じる程煌めくシャンデリアはいかにもな高級感を醸し出していた。
まぁ、実際高いんだろうけど。
こんなパーティーを催すような金持ちの道楽になんて興味無いから、少なくとも今はどうでもいい。
「……はぁ」
五感すべてを忌々しい不快感に襲われ、僕は渇いた喉からため息を吐き出す。
ざわめき僕の周りに群がるけばけばしい化粧を施した女の子たちは、僕がため息を吐いたことにすら気付いてないんじゃないかな。
『あ、の…湊先輩…』
『なぁに?ラビちゃん』
『ッ!あた、し…人に酔ってしまったみたいなので、外に、出てきますね…』
この状況を緩和してくれていたラビが、分かりやすい嘘を理由にここを離れたのは先程のこと。
僕を見つめていた涙に濡れた潤んだ瞳は悲哀が滲み、踵を返した時に長い髪から一瞬だけ覗いた肩はぱっと見て分かるほど震えていたのを憶えている。
「少し…苛め過ぎちゃったかなぁ……」
どこかで泣いているかもしれない。
今この瞬間に、誰よりも愛おしいあの仔がどこかで泣いているかもしれない。
それなのに無意識のうちに綻ぶ口元は、まるで僕自身が【普通】というものから逸脱していることを具現化しているようだった。