【短】生徒会の秘蜜〜非日常的な日常〜
――――ガラガラ、ガラッ
「トリック・アンド・トリート!」
「ひゃあ……ぅ?」
「げ……」
誰もいないだろうと踏んで、開いた扉の向こう。
廊下にまで響くような大きな声で、先程までの静寂はかき消えていた。
突然のことに肩をすくめたあたしの傍ら、那智くんはイヤそうな雰囲気を隠すこと無く顔を顰めていて。
「え、と…これは一体……?」
しかめっ面の那智くんと満面の笑みを浮かべているクラスメイト達を交互に見やりながら、あたしは引きつる喉から無理やり問いを押し出す。
「あのね來美ちゃん!これは「帰るぞ、來美!」……ちょっと、那智!」
一気に向けられたクラスメイトの爛々と輝く愉しげな視線に、脳内がついていかなくてあたしはひたすら疑問符を浮かべる。
そんなあたしを余所に、何かを話そうとしたクラスメイトの言葉を遮った那智くんは、あたしの手首を掴むとクルリと身体を反転させ教室を出ていってしまう。
「ちょっと待ちなさいってば!那智は本当にノリ悪いわね、まったく」
「うっせぇよ、ほっとけ」
那智くんに手を引かれたまま、あたしの身体が半分ほど教室から出たころ。
慌てる様子も無く、ただ呆れたように那智くんを止めてくれたのはクラスの中でもしっかりしている綾ちゃん。
「とりあえず一旦、教室に入りなさいよ。説明するから」
綾ちゃんは教室内を指し示しながら、諭すように話し掛ける。