【短】生徒会の秘蜜〜非日常的な日常〜
それでも頑なに首を縦に振らず、綾ちゃんとクラスメイトを睨み続ける那智くん。
あたしより背の高い那智くんの視線は、あたしの頭上を飛び越えていて。
何も言わない那智くんの瞳をあたしが見つめても、視線が交わることはない。
「ハァ……」
「綾、ちゃん…?」
那智くんを見つめていると、後ろから溜息が聞こえてきて。
チラリと綾ちゃんのほうに視線を這わせると、目の前を綾ちゃんの綺麗な長い髪が流れていった。
「ちょっと耳かしなさい」
那智くんの目の前に立ちふさがった綾ちゃんはそう言うや否や、有無言わさずに那智くんのネクタイを引っ張る。
勢いにまかせてネクタイを引っ張られた那智くんは、少し屈んだ態勢になって…綾ちゃんとすごく顔が近いのが気になる。
「うわ、ッ…!何なんだよ、一体……」
「うるさいわね。いいから、ちょっと」
それでも多少の身長差が残って、綾ちゃんも少し背伸びして那智くんの耳元に唇を寄せる。
近づく綾ちゃんを無理やりひっぺ返そうとする那智くんに、まるでいたずらを思いついたかのように妖しい笑みを浮かべる綾ちゃん。
美男美女、って…多分こういう人達のことを言うんだろうなぁ……。
ふたりの姿を見て、ふとそんな風に思った。
身を寄せ合うように見えなくもないふたりは、会話さえ聞いていなければ正に美男美女だ。
そんなふたりを見て、あたしは――――……
【ズキリと胸が痛んだ】→5ページへ
【付き合ったらいいのに】→次のページへ