【短】生徒会の秘蜜〜非日常的な日常〜
【那智side】
來美によって突然振り払われた、俺の手。
驚いて來美の方を見ると、來美はなぜか泣きそうな顔をしていて。
「ら、び…?」
衝動的にそっと來美に手を伸ばし、途切れながらも來美の名前を呼ぶ。
「ッ……」
でも俺の手は、來美がまるで俺の手を避けるように後退ったせいで來美に届くことはなかった。
「…來美?」
さっきよりもハッキリと名前を呼ぶと、來美はハッとしたように、俯いていた顔を上げる。
俺をまっすぐ見るその瞳には、今にもこぼれ落ちそうなくらいの涙が溜まっていて。
どうしたんだよ…?
なんで、そんなに泣きそうな顔してんだ?
決して小さいとは言えない疑問が、來美の表情が…俺のナカを引っ掻き回す。
好きな女に…來美に泣いてなんてほしくない、そんなの当然だ。
当然なのに、泣かないでほしいと思う反面、俺の黒い感情が來美の表情を扇状的に魅せる。
「大丈夫?來美ちゃん」
ふと來美の表情に見入っていた俺の視界に、クラスメイトの男が映って。
チラリとこちらを伺い見た男の目はスッと細められ、口角はニヤリと厭らしい笑みが浮かべられている。
そっと來美の肩に男の手が置かれた途端に、俺のナカで黒い感情が弾けとんだ。
來美に、触んじゃねぇよッ!
モヤモヤとしたどす黒い感情が身体を支配する。
頭で考えるどころか、理解すら追い付かない状況の中。
「來美に、触ってんなよ」
気が付けば男から引き離すように、來美を強引に抱き締めていた。