教室バロック
・碧い目玉と螺旋のパズル






――― " 少女人形 "



壁に寄り掛かり
両手両脚を軽く開いて、座っている

頭には大きな、黒いサテンのリボン


緩くウェーブの掛かった、琥珀色の髪は
その降ろされた、真っ白な指先まで


着せられているものは
ビジュアル系ファンも好む
ゴシックロリータ

木綿にレースを飾られた黒いドレス


脚には腿まで届いた黒ストッキングに
靴は紐の付いた、先の丸いブーツ





――― 陶器みたいに白い頬

触れようとした時

碧い眼が動き、こっちを向いて




湯浅は短く叫び


オレは膝をついたまま


軽く、デコピンしてみた





「 いたあっ! 」



「 うおっ 人形じゃないのか! 」


暗幕が開かれ
再度の笑い声



「 …ライヴハウスで拾って来た

たまに来ては、またどこかに行く
…言う事聞かないし、
人形とは言えないね 」


部屋の真ん中にあるテーブルに
白衣を着た『ハルト』さんが
ゆっくりと、珈琲を置いて行く




「 ―― これ…

『サテン・ドール』の主人公

"リリス"の…コスプレですよね … 」

寝言みたいな声の湯浅が、目を見開いて
呆然とした表情で立ち尽くす




「 そうね

レースのデザインが独特だから
自分で編んだんだ

絵に描かれてる質感、

――― 良く出てるでしょ? 」



「 …はい 凄すぎです… 」



「 珈琲飲んで、少し汗ひいたら
採寸、しましょうか 」







< 107 / 287 >

この作品をシェア

pagetop