教室バロック
・碧い目玉と螺旋のパズル
――― " 少女人形 "
壁に寄り掛かり
両手両脚を軽く開いて、座っている
頭には大きな、黒いサテンのリボン
緩くウェーブの掛かった、琥珀色の髪は
その降ろされた、真っ白な指先まで
着せられているものは
ビジュアル系ファンも好む
ゴシックロリータ
木綿にレースを飾られた黒いドレス
脚には腿まで届いた黒ストッキングに
靴は紐の付いた、先の丸いブーツ
――― 陶器みたいに白い頬
触れようとした時
碧い眼が動き、こっちを向いて
湯浅は短く叫び
オレは膝をついたまま
軽く、デコピンしてみた
「 いたあっ! 」
「 うおっ 人形じゃないのか! 」
暗幕が開かれ
再度の笑い声
「 …ライヴハウスで拾って来た
たまに来ては、またどこかに行く
…言う事聞かないし、
人形とは言えないね 」
部屋の真ん中にあるテーブルに
白衣を着た『ハルト』さんが
ゆっくりと、珈琲を置いて行く
「 ―― これ…
『サテン・ドール』の主人公
"リリス"の…コスプレですよね … 」
寝言みたいな声の湯浅が、目を見開いて
呆然とした表情で立ち尽くす
「 そうね
レースのデザインが独特だから
自分で編んだんだ
絵に描かれてる質感、
――― 良く出てるでしょ? 」
「 …はい 凄すぎです… 」
「 珈琲飲んで、少し汗ひいたら
採寸、しましょうか 」