教室バロック




半開きの入口ドア前には
オレと湯浅


作業机と化したビリヤード台


その向こうに
ハルトさんと『ルウ』が居て

彼女は、暗幕をズルズルと引きずって来て
部屋の一番端、角に丸めて敷いて
そのまま包まって寝てしまった




ハルトさんが大きく窓を開くと

隣のビルに あかりは無く
赤と黒の、斑模様の空

桟に腰掛け、オレを見て笑う





――― どうしてこの人の口から
アイツの名前が出て来るんだ…?




キョトンとした湯浅が、先に答えた


「 ええ、伊藤は俺達の学校の…
どうしたんですか? 」





外に何台かの車が停まり

矢継ぎ早な、バラバラとした靴音


ドアが閉まる








――― ハルトは

ビリヤード台にあったキューを取ると
自分の肩をポンポンと叩き
再び嘲った





「 ―― 湯浅 」


「 え、 うん 」


「 …先に、帰っててくれや

俺ちょっと、ライヴで使う服の事
相談しようと思うんだわ

時間かかるかもしれないし
湯浅もさ、ぽんぷさんと相談、あるだろ 」


「 …―― え、あ、……うん

わかった 」



「 湯浅くん

―― もう少し外には出ない方がいい 」


「 え ど どっち?! 」




『 水谷 』は

オレ達の横を通り、
ドアのノブに手を掛けると


「 ルウ 外、何人? 」




ルウは、 ぱちりと目を開くと

「 じゅうさんにん 」と答えた



「 … オレも行く 」



水谷が ――――
これから何をしようとしてるのか判って
ドアに手を延ばそうとすると

クリスマスのあの時の様に
キューで喉仏を圧された



「 ――― 邪魔 」



ニコリと笑うと
白衣を翻し外へ出ていく







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